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コラム
2020/07/25
<リバースオークション戦略> 適正価格での購買のむずかしさ
比較購買を行うだけでは十分ではない
いつまでも「いつもの3社」ではダメ
どこの会社も間接材・非戦略購買で「比較購買」を行っていないのでしょうか?
答えは「NO」です。ほとんどの会社には稟議制度があり、決裁事項は上司などの承認を経て決定する仕組みになっています。非戦略購買であるモノやサービスについても、「3社見積を取り、それを稟議書に添付すること」といった社内規定やルールがあり、それを実行しているのが普通です。その点では実際に複数の業者さんから見積書を入手して、価格などを比較して購買していることになります。
しかし、その3社見積が本当に有効なのかについては、有効だと断言できません。
そもそも稟議書に3社見積をつけるというルールの目的は、比較購買を確実に行うためのものです。できるだけ市場価格に近い適正価格で購買するために3社見積を取るのです。
ところが、その3社見積が「いつもの3社」からの見積だとすればどうでしょうか?
今まで取引のある業者さんとは、一定程度の信頼関係の上で購買・調達が行われていますが、見積価格が本当に市場価格に近い適正価格かどうかの確証はありません。「いつもの3社」では、過去の実績や習慣、お互いの友好関係などもあり、ある種限定された環境でのやり取りになっているからです。
仮に担当者が3社の見積価格を「全体的にちょっと高い」と感じていても、それに対抗するだけの情報がなければ、その3社見積を「妥当」とみなして稟議書に添付して決裁を仰ぐことになります。
つまり、「いつもの3社」からの見積では、「本当に市場価格に近い適正価格」という有効性が薄れてしまう危険性があるのです。
こうした例がすべての会社に当てはまるわけではありませんが、「いつもの3社」からしか見積を取ることができないケースが多いのも事実です。もしそこにもう1社増やして新たな4社目に見積依頼ができれば、稟議に上げる3社は違ったメンバーになるかもしれません。
新しい取引先が増やしにくい理由
ところが、実際に新しい業者さんを見つけてくるのは大変です。人事部や営業部やマーケティング部など、別のメインミッションを持った人が新規の業者さんを探すには大きな労力が必要になります。
たとえ新しい業者さんを見つけたとしても、今度は自社が購入したいモノがどんな内容であるかを具体的に適切に伝えなければなりません。それがよくいわれる「仕様書」です。
いつもの3社であれば、「あの商品をいつもどおりに1000部よろしく」で済む話が、新しい4社目の業者さんにはそれを言っても通じません。見積も出してもらえないでしょう。
たとえ見積が出てきたとしても、新しい4社目に十分な情報がなければ、いつもの3社よりも価格競争力のある見積を出すことはできないでしょう。
このように、比較購買をすることが購買の基本でありながら、実際にはそれが確実に実行されていないというのが実情です。しかし比較購買を確実に行わなければ、市場価格に近い適正価格で購買することができないのです。
谷口健太郎 著 「リバースオークション戦略」東洋経済新報社 を要約
谷口健太郎 著書
「リバースオークション戦略」東洋経済新報社
「間接材購買戦略 〜会社のコストを利益に変える〜」東洋経済新報社この記事が「参考になった!」と思ったら、facebookまたはTwitterでぜひ
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