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コラム
2020/10/02
<リバースオークション戦略> 過剰品質から適正品質へ
要件緩和でコスト削減
リバースオークションでの事例
新しい売り手に「聞く」ことが、どれほど重要なのかについて事例を紹介します。
■実はけっこうある! 発注者も明確に知らない「自社の仕様」
ある会社(小売流通業)では、商品を紙袋に入れてお客様にお渡ししているのですが、その紙袋は年間で5000万円にもなります。
紙袋を発注しなければならない時期になったため、購買担当者は従来の取引先2社に見積依頼をしようと思っていました。そのようなタイミングで私たちディーコープと出会いました。
そして私たちが新しい業者さんをご紹介したため、今回は新しい業者さんを含めて見積依頼をすることになりました。
この会社では、従来見積依頼にあたり提案依頼書などを、自社から文書で提示はしていませんでした。見積依頼は前任者から受け継いだ情報を口頭で伝えるくらいだったため、仕様の詳細まで考えることがなかったのです。
しかし新規業者が加わる為、今回は仕様を明確に伝えることが必要になりました。
■売り手企業に「聞く」ことで より「適正購買」に
仕様について考えてみると、実はいろいろなポイントがあります。
たとえば、紙そのものの品質、大きさ、袋のマチ幅、取っ手の種類、折り返し、デザイン、配色・・・等々です。
そこで過去の見積書や注文書を取り出して、仕様の検討を私たちと一緒に始めることにしました。
そして私たちは、発注ご担当者からの依頼内容、考えや想い「この紙袋の品質レベルを落とさないで、コストを抑えられればいいのですが……」を見積依頼先へ伝えました。
すると新しい業者さんが、「この仕様にある左右の幅の誤差が2ミリ以内とあるのを、5ミリ以内に変更することはできないですか」と言われたのです。
「どうしてですか」と業者さんに聞くと、「紙袋は機械で生産しますよね。そうすると2ミリだと歩留まりが悪くなってしまうのですが、5ミリにすると歩留まりがよくなりますから、いい値段が出せるんです」という返事が戻ってきました。
なるほど! と思いました。
ただ、要求仕様を私たちが勝手に決めるわけにはいきませんので、その内容を購買のご担当者に話をしました。「2ミリを5ミリにしたら、いい値段が出る可能性があります。今までの仕様を変えることはできませんか」と。
するとこの仕様は、会社が必要な仕様として細かく決めたものではなく、これまでの業者さんの提案で問題がないのでそのまま使っているだけのものでした。「単純に引き継がれていただけだった」のです。
このケースの場合、紙袋の大きさの誤差が2ミリでも5ミリでも、その他の品質が保たれて安くなるならばそれに越したことはありません。要は、業者さんにいわれるままの仕様ではなく、「自分が欲しいものは何か」「達成したい要求は何か」ということをはっきりさせることが大切なのです。必要以上の高品質は無駄になるのです。
■仕様で変わる見積提出数
こうしたやり取りのあと、意見を反映した仕様書をつくり見積依頼したところ、当初はお付き合いのある業者さん2社含め3社しか対応できる業者さんがいなかったのに、結果10社もの業者さんから見積書を提出してもらうことができました。
いかに適正品質で依頼することが大切であるかということですね。
谷口健太郎 著 「リバースオークション戦略」東洋経済新報社 を要約
谷口健太郎 著書
「リバースオークション戦略」東洋経済新報社
「間接材購買戦略 〜会社のコストを利益に変える〜」東洋経済新報社この記事が「参考になった!」と思ったら、facebookまたはTwitterでぜひ
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