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コラム
2018/12/05
調達にアタラシイ視点?~エシカルな消費とは~
「エシカル消費」という言葉をご存知でしょうか?
あまり聞きなれないフレーズかもしれませんが、近年注目されている言葉です。
◆新しい購買の基準
モノを買う時、我々はその購買が自分にとってどれだけメリットがあるかを考えます。
例えば服を選ぶとき、見た目のデザインや肌触りなどの品質、そして価格を中心に買うかどうかを考えると思います。
しかしそのような服が途上国の人を奴隷のように働かせて作られていたらどうでしょう?
実際、過去には途上国では労働者をボロボロの建物に集めて働かせ、
その建物が崩壊して多数の死者が出た事件が社会問題になりました。
自分の購買は、自分以外の誰かを傷つけることがある。
誰かにとって悲劇の引き金になる購買は避けよう、むしろ良い社会を実現できる購買をしよう。
そのような『倫理的な』考えを『エシカル』と呼びます。
いま「自分以外の何か」へも配慮したエシカル消費が広がっています。
◆フェアトレードの思想
上記のような途上国の労働環境の遠因になっているのが購買価格です。
世界市場では需要と供給のバランスで価格が決まるため、
途上国の産物は政治問題やその年の気候によって異常に安い価格で買い叩かれることがあります。
しかし途上国は特定品目の輸出産業に頼っている傾向があります。
例えばエクアドルのバナナ輸出は、エクアドル全体の輸出額の1割も占めています。
市場価格が変わったからといって産業構造をすぐに変えることはできませんから、
生産物価格が下落すれば安い賃金で働かせるしかありません。
そこで、市場価格が下がっても労働者が最低限の生活が出来る賃金を保証できる水準、
その金額以上で購入するのがフェアトレードです。
例えばスターバックスではこのフェアトレードに準じたコーヒー豆を積極的に購入し、
途上国の健全な労働環境へ配慮した調達を行っています。
◆エシカルが見た目でわかる認証マーク
「自分以外の何か」で配慮すべきは途上国の労働環境だけではありません。
人に関わる貧困/教育問題から地球規模の環境問題まで、世の中の課題の数は山ほどあります。
そうは言っても「配慮した製品かどうか」は見た目ではわかりにくいもの。
そのため課題に対して具体的な対策をしている製品に発行される認証マークも存在します。
前述のフェアトレードの認証マークも存在しますし、
森の生態系を破壊しないような配慮をした材木にはFSC認証、
海の生態系を破壊しないよう配慮をした海洋資源(魚など)にはMSC認証など、
多様な認証制度があります。
このような製品を買いたいという消費者の増加に伴い、
小売店大手のイオン社ではMSC認証を取得した魚を積極的に取り扱うなど、
消費者のみならず企業も認証マークを調達の基準に導入する動きは少しずつ広まっています。
エシカルな消費はマーケティングに直結する時代なのです。
◆一部が社会改善に使われる売上
もう一つのエシカルに関わるマーケティングの代表格がコーズリレイティッドマーケティング。
略してコーズマーケとも呼ばれます。
これはメーカーが製品売上の一部を特定の社会改善のために活用する販売方法。
直接売上を寄付することもあれば、物品の寄付に使われることもあります。
有名な例が、某ナチュラルウォーターブランドが展開した「1ℓ for 10ℓ」というキャンペーン。
このミネラルウォーターが1リットル購入されるたびに、
水が不足する途上国にきれいな水を10リットル送るという仕組です。
価格も品質も近い製品が並んでいたら、
何かしら社会に役立つ製品を買いたい消費者は多いもの。
そのような消費者に選んでもらうことによって企業側も差別化が出来るwin-winの仕組です。
◆少しずつ企業にも求められてきたエシカル調達
以上のように、消費者に浸透しつつあるエシカル購入ですが、
最近では倫理的な調達をする企業を選んで投資をする資産家も出てきています。
その結果、エシカル調達は企業にも少しずつ求める動きが顕在化しており、
突然 明日から全ての購買をエシカル調達にしろと言われることはないでしょうが、
今後の動きも含めて少しずつ情報を入手しておくことが重要と言えるでしょう。